『アルシヴ・イゾレ TRPG』 はどのような TRPG なのか

  • このタイミングでこのブログを書くのが最適なのかは分からないけど、とりあえず書くことが出来るので書きましょうね。
  • このエントリーは、『アルシヴ・イゾレ TRPG』 がどのような TRPG なのかについてのものです。私はTRPG というのは役割演技を本質的に行うゲームだと思っていますが、それにしてもこのゲームの舞台設定や、テイスト、どのようなことが世界の中で起こると想定されているのかということをこれまで語っていなかったように思います。それでいて、世界の中に登場する人物になりきろう、と言うのもおかしなことなので、それについて書こうと思います。
  • 『アルシヴ・イゾレ TRPG』 はどのようなゲームであるか? 私が愛して止まない『熱血専用!』は、確かドラマチックな死に様を演じるゲーム……なのかな? だったような気がします――ちょっときちんとした文言は引かずに済ましてしまいますが。それでいくと、『アルシヴ・イゾレ TRPG』 は、(i) 「きちんと戦えるクトゥルフ神話 TRPG」 というのが一つの側面であり、また (ii) 尋常ならざる世界の真理に触れ、人間としての良心を失っていく過程に苦しむのを演じる TRPG であり、それでいて (iii) 人間でない者の素晴らしさと、その素晴らしさに憧れる人間の姿を描く TRPG でもあります。でも、(i) に近いことでもありますが、(iv) 剣と魔法が火花を散らすファンタジー的な側面もあります。
    • 私のことを知っている人はうすうす気付いているかも知れませんのでここではっきり書いておきますが、私はそのようなテイストの小説を書こうとしていました。まあ実際少し書いたりもしたのですが、そうした小説で表現されるようなことがゲーム中に起こることを、私は『アルシヴ・イゾレ TRPG』 に期待しています。
    • 小説の続きを書かない理由は幾つかあるのですが、一番大きな理由は、ちょっとここから数年間は、必要でない限り日本語を気合い入れて書きたくないからです。
  • 私は――というか、『アルシヴ・イゾレ TRPG』 のことを考えている時の私は、次のような作品に影響を受けています。また、次のような作品の中で起こったことは、『アルシヴ・イゾレ TRPG』 の中で起こることが可能です。『宵闇眩燈草紙』。『Fate/Stay Night』。『低俗霊 Monophobia』。兎に角『宵闇眩燈草紙』は非常に大事なので、『仙木の果実』・『塊根の花』と合わせて、是非とも読んで下さい。
  • ただ、少々個別的な話ですが、えーと、名前を出さないと話にならないので出しますが、次回からの The Million Lilting Crossroads (ゲームプレイグループの名前です。略称:MLC) のグループでのセッションの舞台は、現代の日本です。『宵闇眩燈草紙』・『仙木の果実』・『塊根の花』の舞台はちょっと古い日本なのですが、やっぱり私達は現代の日本文化の中で育ったので役割演技をするなら舞台を現代にした方が演じやすいよね、と思いました。
  • もう少し『アルシヴ・イゾレ TRPG』 のテイストの話をしましょうね。
    • (i) 私は、『クトゥルフ神話 TRPG』 に不満がありました。それは、折角事細かに武器などの情報が載せられているのに、ゲームのテイストの方が、争いが起こることを拒否しているということです。プレイヤーキャラクターはただの人間で、兎に角ひ弱です。神話生物ならずとも、怪物と戦うとしてもどうやって逃げるかをまず考えることになります。どうしてまともに戦えないのか。もっときちんと戦いたいねん。そういうことです。
    • (ii) でも、街中で魔法のビーム光線をブッ放したら周囲の普通の人間達に知られるでしょう。それは、物語が終焉に向かっていくことです。なぜ私のプレイヤーキャラクターはその魔法の力を使って世界征服に乗り出さないのか? いや、乗り出したっていいのですが、そういうテイストではないのです。あなたのプレイヤーキャラクターは魔法の力を使って世界征服に乗り出さない。それは、禁じられているのです。何によって? 倫理によってです。『アルシヴ・イゾレ TRPG』 の中では、人間は魔法を使う度に自分が人間でなくなっていっていることを自覚し、良心の呵責に苛まれます。だから世界征服に乗り出さないのです。そして魔法を使い慣れて人間でなくなったら、また別の規範に囚われます。それは魔術師のコミュニティーの規範かも知れないし、あなたのプレイヤーキャラクターにとって大事な、守るべき存在かも知れない。魔術師は放埒ではないのです。
    • (iii) ただ、自分が普通の人間ではなくて魔法が使える特別な人間だと思うこと、そういうキャラクターを演じるのは楽しいことだと思います。というか、それが『アルシヴ・イゾレ TRPG』 が眼目とする役割演技の一つです。だからこのゲームでは、プレイヤーは未知の魔術に惹かれる人間を演じます。或いは未知の魔術をひけらかして人間を惹き付ける魔術師を演じます。人ならざる魔術師は素晴らしいのであり、人間はそれに惹き付けられる。(そしてその素晴らしさに与りつつも人間は苦悩する (ii)。)
    • (iv) そして魔法の何が凄いって、そりゃ戦いに於いて強いってことです。ってことで『アルシヴ・イゾレ TRPG』 では、魔法を使って戦います。まあ (i) の要素の内実は、きちんと剣と魔法を使ってバトルするってことだよってことです。
  • という風に『アルシヴ・イゾレ TRPG』 の狙いを紹介しましたが、実際のプロットのトーンには、幅があると思います。私が『クトゥルフ神話 TRPG』 のマスターをするとしたら(まあ実際にやりましたが)、トーンはがちがちのシリアスになると思います。そりゃまああのゲームはホラーを大事にしますので、プレイヤーキャラクターの人間は兎に角ひ弱で、直ぐに痛めつけられてします。逃げよう逃げよう。というわけで、朗らかさが無いわけですが、『アルシヴ・イゾレ TRPG』 はもう少しキャラクターが強いので、余裕があります。ので、もうちょっとコミカルかも知れません。人間のキャラクターは、基本的には魔術さえ使わなければ道徳的に苦しまないので、人間でないキャラクターを多めにパーティーに入れて戦闘を任せるようにすれば、大分明るいストーリー運びになると思います。
  • これでテイストの紹介になっただろうか。まあまた語ることもあるでしょう。次回は、実際のセッションの舞台の話をしましょう。